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自己肯定感とナルシスト
2025年06月01日
NHKラジオビジネス英語の先生が毎回、「皆さん、自己肯定感を高めていきましょう」と仰っていますが、どういう意味なのかなとちょっと思ってしまいます。「この難しいプログラムを聴いている自分は偉いと思いなさい」という意味なのか、「内容が全然わからなくても、自分には才能があるから絶対いずれわかるようになると思いなさい」という意味なのか。どうも、英語を勉強することと自己肯定感を高めることの相関関係がよくわからないのです。むしろ、こと英語に関しては、「どうしてこう何年やってても、英語が日本語と同じレベルで使えるようにならないんだ」と自己肯定感が低い方が上達に繋がる気もします。
この事例以外にも、最近よく聞かれるようになった「自己肯定感」ですが、私には今一つ意味が分かりません。私にとって自分は自分であり、自分を肯定するとか否定するとか考えたことがありません。むしろ問題なのは、そういう自分を周囲が受け入れてくれるかです。受け入れてもらえなければ、対策を立てなければいけません。対策方法は大きく分けて3つです。まず、自分が周囲に受け入れてもらえるように変わる。また、自分を受け入れるように周囲を変える。あるいは、自分を受け入れない周囲から去る。この3つ以外考えられません。このうちのどれを取るかを決めるうえで一番大切なことは自分を闇雲に肯定することでも否定することでもなく、自己を周囲との関係の中で客観的に見ることだと思うのです。自分という存在は周囲からどのように見えるのか、これを冷静に把握することが大事です。そうしなければ、対策を間違えてしまう。
確かに、最近周囲の見解と著しく異なって自己肯定感の高い人というのが増えている気がします。そういう人は、周囲に何と言われようと馬耳東風。客観的事実とおよそ親和性のない、自己が描いた空想の世界で、「自分は周囲より優れている」と信じ続け、一向に上記3つの対策のいずれかを取ろうとしない。その結果、意に反して周囲からはじき出されることになってしまっても、根拠のない自己肯定感だけは揺らぎません。正直、少々困った存在です。
自己肯定感が高いのとナルシストは違うのだそうです。ナルシストは、自分が美しく優れているということを周囲に認めさせようと上から目線の言動を繰り出し、その言動を否定されると激高するそうです。つまりカスハラやマスク警察のメンタリティでしょう。一方、自己肯定感の高い人というのは、周囲とは関わりなく、自分は凄いと信じている。だから周囲から何を言われようが怒りもしないし、気にもしない。だから人畜無害ではありますが、やはり周囲をかなりイライラさせる存在にはなってしまいます。
一方で、自己肯定感がただひたすらに低くて、接するのが難しい人というのも確かにいます。いつも「自分はダメです」ばかりで埒が明かない。しかし、こういう人は私の経験上、伸びる可能性が十分にある。「そんなことないよ。あなたには優れたところがたくさんあります」ということを、事例を踏まえて辛抱強く示しているうちに大きく変わるケースが多いです。それに対して、自己肯定感がなぜかに高いタイプを変えるのは非常に難しい。なにせ、こういう人たちは周囲の言うことには耳を貸さないわけですから。
代表取締役 CEO 奥野 政樹
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