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わがままと自分勝手の違い

2025年02月01日

 今年は急に、「これで年賀状を最後にさせていただきます」という方が増えました。同世代が、キャリアに一区切りついたということが一つの大きな要因のように思われます。自分もそういう年頃なんだなということを強く意識させられました。そういえば昨年末、少々納得のいかないこともありました。旅行先のフィリピンの空港で搭乗に長蛇の列ができていたのですが、係の人が、”60 or above? Priority for seniority, here.”と私をシニア優先列へと導いたのです。お陰様で、待つことなくスムーズに出国できたことはありがたかったのですが、「やっぱり、そう見えるんだなあ」ということについては、あまり気持ちの良いものではありませんでした。

 そうは言っても、一つ歳を取り、更に一つ年を越えるたび、ダブルパンチで体力が落ちていくし、身体にも不調が発生していくことは否めません。つい5年くらい前までは、若い頃とさして変わらないスピードで走れたのが、ここのところは、二つのターニングポイントを越えるたびに信じられないほどタイムが出なくなります。同じ量食べて、同じだけ運動しているのに、体重は激増していく。老眼ではなく、別の病気ですが、目が見えないので麻雀ではここ一番の大事なところでチョンボばかり。これでは、いくらお金があっても足りません。このペースで行ったら、この先一体どういうことになってしまうのか。考え出したら不安なので、なるべく考えないようにはするものの、現実に目を伏せることは非常に困難です。
 そのような状況下、帝国ホテルでイベントがあり、久しぶりで日比谷公園沿いを歩きました。20歳代の後半、私は帝国ホテルの隣の隣くらいが職場だったことがあり、よくこの道を歩きました。公園の反対側に新霞が関ビルが見える景色は月日が経ってもあまり変わりませんが、それを見る私の心境は大違いです。

 当時は独身の平社員ですから、自分がなんらか責任を負わなければいけない人など一人もいません。ただ自分の能力を伸ばして、活躍できるようになることばかりを考えていました。そのためには、自分を伸ばしてくれそうなものには、なんでも突入していきました。組織の論理とか、自分の役割とか、無礼とか、迷惑とか、全く興味なし。ビルの上から下まで、行ったり来たりしては、頼まれてもいないのに、首を突っ込み、口を出し、手を動かしていたものです。そういうことをしていると「わがまま」と言われることも多かったですが、なにせ、責任がないのですから、それもなんとも思いませんでした。

 今は、寒空に荒涼とした日比谷通りを歩いていると、この先どうなるのかとか、いつまでできるものかといった不安がこみ上げてきます。この30年あまり、多くのことを経験したし、色々な問題も乗り越えてきた。昔と違って、なにがしか自分の責任下にある人というのも公私ともにいるわけですが、その責任を果たしていくだけの実力はそこそこつけてきたつもりです。まだ、伸び代だってある。そうは思うのに、現実には様々な場面で、老いによる不都合は突きつけられるわけで、楽天主義に浸っている気にはなれません。

 そんな中、米国では、トランプ2.0が始まりました。私は同級生などからは米国通と思われることが多く、昨年暮れも随分と、「もしトランプになったら(もしトラというらしい)世の中はどうなっちゃうんだ?」と質問を受けました。実は、私は米国の政治をそんなに熱心にフォローしているわけではなく、質問者の方が私よりよっぽど詳しいようで、いくつもトランプの具体的な言動の不安材料を挙げてきます。そんなとき、私はこんな回答をしていました。「トランプでどうなるかなんてわからないよ。でも、別にアメリカの大統領なんて誰でも、世の中そんなに変わらないんじゃないかな。ただ、好き嫌いで言えば、俺は人の揚げ足取りだけしてる元検察官より、主張がはっきりしてるトランプの方が好きだけどね。」どうも、期待外れの回答のようで、場は大いに白けていました。

 年が明けて、いよいよトランプ2.0が始まりました。とにかく、多くの論点について、白黒はっきりした言動をするので、そのうちの半分くらいは私も首をかしげたくなるものはあります。やりたいことをやるという意味では、たしかに相当にわがままだと感じさせます。ただ、自分勝手なのかというと、そうとも思えません。自分だけが得をしようとしているようには思えないということです。私がトランプで一番評価しているところは、戦争で人が死ぬことを嫌がっていることと、トランプ1.0政権の時ですが、「北朝鮮は、日本の小学生の女の子を海岸から誘拐するというトンデモナイことをした国だ」とはっきり非難してくれたことです。

 結局、この人が民主主義のもと当選したのは、なにも分断などというよくわからない理由によるものではなく、頭が良さそうに善人ぶってはいるが、実は自分勝手さが見え透いているリーダーより、わがままではあるが、オープンで、感情豊かなリーダーの方が安全だという判断であるような気がします。


 私は、別にトランプをロールモデルにしているわけではありませんが、この先、どこまで行けるか。若い頃と違って、怖いもの知らずではありません。周り中、怖いものだらけです。その中で、やっぱり、どこまで、そしていつまでわがままを貫けるか。そこにかかっているのでしょう。


代表取締役 CEO 奥野 政樹

 

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