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即戦力とは何か

2022年02月01日

 当社では、人材を採用する際には会社説明会というのを行うのですが、そこでは当社の若手社員達にも当社の魅力などについて語ってもらっています。そこで彼らがよく言っているのが、「他の会社は即戦力の人材を求めているが、当社は未経験者でも採用してくれるし、ちゃんと仕事もさせてくれる。」ということです。私としては本当は、この会社は他社とはちょっと違った価値観があって面白いとか、社員個々の個性を上手く活かしてくれるとか言って欲しいのですが、どうも社員の方はそこよりも即戦力でなくてもよいということ、つまり育成重視をまずこの会社の特徴と考えているようです。そう言われると確かにそうかもしれないのですが、私はむしろそこはあまり意識していませんでした。

 そう言えば、当社も遠い昔は即戦力を求めた採用をしていたことがありました。そして、全部というわけではないですが多くの場合において、悲惨な結果に終わりました。セールス、エンジニアリング、あるいは財務、そういった職種においてそれ相応の実績とスキルを持つと書類や面接で主張する、いわゆる即戦力の経験者を採用しても、実際に入社して仕事を始めるとまったくかみ合わないことばかりでした。まず、変に経験があるとこれまでの自分のやり方にこだわって当社式の新しいやり方に合わせようとしない。それがかみ合わない最大の理由になることが多い。また持っているというスキルも、実はどこかのネタ本に書いてあるような上っ面の知識に過ぎず、まったくその本質を体得していない。あげくの果てに、評価されないから拗ねてしまい大いなる問題社員となる。それは社内のいざこざや労働問題にも発展して、会社の存続に大きな脅威を与えることにもなりました。

 結局、会社に貢献する人を採用したいのであれば、小手先の経験やスキルなどにこだわるよりも、“仕事ができるようになる人”を採用した方がはるかにいいわけです。“仕事ができるようになる人”とはどういう人か。それを考えるにはまず、“仕事ができる人”とはどういう人かということを考えなければなりません。私はそれを、以下の条件を備えた人だと社員達に言っています。

1.課題、なすべきこと、困難、解決策、実現性、結果などについて直感を持てる。
2.深い洞察と的確な判断力で直感が正しいか検証できる
3.検証の結果、直感が当たっていることが多いが、修正すべきは修正してやるべきことを決断できる。
4.決断を実行する勇気がある。
5.決断を実現するために他者の力が使える。
6.最後に最低限必要なスキルがある。


 さて、では候補者がこの資質を持っているのかをどのように見抜くのか。それには、どのようにしたらこれらの資質が磨かれるのかを考えるとわかりやすいと思います。まずすべては、直感が持てるかどうかからスタートします。仕事ができない人というのはほとんどの場合、直感が持てない。だから、どうしたらいいのかをグズグズ考えたり、誰かの言いなりになったりするわけです。そういう人に「よく考えろ。」などと言っても何も始まりません。考えるためにはまず考える対象が必要なのであり、それは、直感を持つしかないのです。

 直感を持てるようになるためには、まずは経験が必要です。だから日常の仕事に真摯に取り組むことは、まず絶対の必要条件です。真摯に取り組むというのは、ただ大過なく業務をこなすということではなく、一つ一つの結果をしっかり受け止め、それに対してのけじめをしっかりつけていくということです。そしてこれは、直感力だけではなく洞察力と判断力を身に付けるにも必要です。もともとこの3つはバラバラのものではなく、三位一体なのです。

 しかし仕事だけしていればいいのかと言えば、それだけではどうしても教材が足りない。だからそれは勉強で補わなければいけない。では何を勉強すればいいのか。仕事というのが究極は人間扱いであることを考えれば、勉強すべきは歴史、アート(ギャンブル・スポーツ含む)、宗教です。よく昔から言うところの、愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、ですね。そして、勉強とはただ知識を蓄えたり、やってみることではなく、疑問を持ち、その疑問にひとつずつ答えを出していくということなのです。

 当社は、即戦力の経験者ではなく、上述した“デキる社員になる人”を採用します。ではそれをどうやって見抜くのか。それはもう、実は簡単で、まず面接する我々が、“デキるようになる社員”になればよいのです。そうすれば、あとは自分達と話がかみ合う人を採用すればそれで終わりです。結局、当社における即戦力とは、我々社員と話がかみ合う「ちゃんとした人」であるというシンプルな結論に辿りついたということです。

 

代表取締役 CEO 奥野 政樹

 

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