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-カスタマーハラスメント(カスハラ)-
2026年06月01日

法律が改正されてカスハラ対策をとることが企業に義務付けられるようですね。ただ、カスハラをするのは企業ではなくカスタマーですから、効果はあまり期待できないと思いますが。カスハラをするカスタマーを即刻出入り禁止にするとか、高額の損害賠償の予定を定めるとか、もっと加害者を取り締まる強力な法律ができないものかとも思いますが、まあ、難しいのでしょうね。
実は、私自身はカスハラの現場に出くわした記憶というのはないのですが、ただ長く知り合いだった人が、ふいに飲食店などの対応にキレかかり、ヒヤヒヤするというようなことは確かに増えているような気がします。
私が社会人として最初に担った仕事は、滞納電話料金を取り立てるという、まさしく、B to Cのど真ん中でした。日本語でいわゆる「クレーム」と呼ばれるものには日々触れていました。それこそ料金滞納で電話の利用を停止した日などは、朝から晩まで料金課の電話は鳴り続け一日中クレーム対応です。でもその中身は、要は金は払わないが電話を使わせろ、というもので、目的はとても明確なわけです。ただ、無礼な対応を謝罪しろ等は一本もありませんでした。要は、お金が無いのですね。でも、下手には出ない。相手は上から押し切ろうとして来るわけですが、まあ目的が明確なので、いわゆる毅然とした対応というのをやっていれば相手も大抵は諦めます。
中には、凄いテクニックを持っている人もいました。例えば、今でいうところの大きな反社会的勢力の末端組織の親分ですが、電話料金を取り立てに出向いたら「お前は、人にものを頼むのに手ブラで来たのかぁ!?。どういう教育されてんだ!出直して来いっ!」と怒鳴りつけられまして、仕方なくオフィスに戻り営業に頭を下げ、いくつかノベルティーグッズを取り揃えてもらいました。ボールペンとか付箋紙とかの類ですね。さっそくそれらを持って親分の所へ行くと、今度は「なんだ、この子供だましは。お前は俺を バカにしてるのか!これを見ろ!電力はこれ、そっちは水道、あっちはガス。みんなちゃんとしてるんだ。それなのに、お前のこれはなんだ!?」言われた方向に目をやると、そこには丁寧に包装された贈答品の数々が積み上げられていて、中には価値ある骨董なのか、甕みたいなものも置かれていました。「しかし、これでも営業に随分頭下げたんですよ。ホントはこういう目的で使うもんじゃないんだけどね、といい顔されなかったんですから」と反論を試みると「お前は、この俺の子分のキヨシにも劣る非常識な奴だ。これから俺が毎月キヨシと一緒に教育してやるから来ーい!」ということになってしまいました。
そして毎月「今日行っていいですか。10万円お支払いお願いしますね」と電話をしないといけなくなってしまったわけですが、3回に2回は「テメエの都合で物言ってんじゃねえ、なめとんのかお前!」と怒鳴られる。でも3回に1回は「よし、来ーい!」とご機嫌です。つまり怒っているときはお金が無い。ご機嫌なときはシノギが上手くいっていてお金があるわけです。
でもその親分、歌舞伎町のフィリピンパブ関係のシノギも持っていたようで、ある日私が集金とキヨシ君との受講のために事務所の雀荘を訪れると、親分がフィリピンのお姉さんにすごい剣幕で怒られている。「まあ、それは、そのさ。俺にも事情はあるわけさ。そこはちょっと、待ってもらえば、ちゃんとするからさ」と平身低頭なのですよね。凄いな、このお姉さんは。教えを請いたいと心の底から思いました。
ということで、親分も演技は上手いが、本当は怒ってなどいない。極めて冷静なわけです。
また、別のクレーマー類型ではこういう人もいました。電話をかけてきて、いきなり「あんた、名前は?」っていうんですね。「奥野です」というと「知らないな。新入りか?」「そうですね」と私。「じゃ、俺のこと知らないか?俺は、お前の料金課のことは隅から隅まで知っている」と歴代課長から、課内の秘められた情事から、あることないことずっと喋っている。「あのー、すいません。ご用件は何なのでしょうか?」といくら聞いても一方的に話し続けます。それで一時間も経った頃「請求書を分割して再発行してくれる?」って言うのです。これ、結構事務処理大変なんですよ。でも仕方ないから分割してあげます。でもそうすると、結局2枚の請求書を一緒に払っちゃうのです。
何故こういうことをするのかとても不思議だったのですが、ある時その人の家に訪問督促をすると、公園で捕まえてきた沢山の鳩と暮らしてるのです。ああ、寂しいのか、ということがやっと分かりました。これがこの人のカスハラの動機だったのです。困った人たちではあったし、あの頃は、正直怒りを覚えることもありましたが、でも、どこかかわいさというか、くすっとするところがないでしょうか?これが昔のカスハラです。
しかし、今のカスハラは違います。笑えない。目的が見えないのですね。お金をまけて欲しいとか寂しいから話し相手になれ、ではないのです。ただ、なにか満たされない欲求不満をぶつけているだけです。しかも、抵抗できない弱い者に対して。コンビニの外国人店員にカスハラする人が多いと聞きましたが、コンビニの外国人店員、素晴らしいの一言ですよね。事務能力も高いし、常連の私のことも覚えていて、ちゃんと支払い方法からレジ袋の要不要まで、言わなくても呼吸がぴったり合います。
なぜ、このようなことになってしまったのか?私は、先月も書きましたがデジタル化が原因の一つになっているのではないかと思います。とにかく。紛れや曖昧さを嫌い、何でも明確に、クリアに。でもそれは無理だと思います。もともと人間なんてそのように明確でクリアではない。それを認めないと、なにも面白くはならない。ただ、ギクシャクだけして、成果も出ない。だから、そのような風潮とは距離を置いて適当に付き合うべきなのですが、真面目な人に限って必死にこのバカげた風潮に真正面から順応して、壊れてしまうのではないか。そして、「俺様を誰だと思っているのか。わらわは姫ぞ」という間違えた自尊心が芽生えてしまう。カスハラする人も時代の被害者なのかもしれませんね。
代表取締役 CEO 奥野 政樹
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