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デジタルで頭が悪くなる理由

2024年12月01日

 タブレットなど、デジタル・デバイスを使って勉強すると学力が落ちるという研究結果が出てきているようです。一説によると、人間の頭がネット環境の与える膨大な情報量を処理しきれず機能停止を起こしてしまい、記憶力や思考力の低下を招いてしまうとか。ただ、この手合いのことは昔からよく言われており、私の子供の頃はテレビやプラモデルがよく標的にされていました。テレビは情報を映し出すので創造性が働かない、プラモデルは完成したものをわざわざ壊してマニュアル通りに組み立てているだけで、これまた創造性が養われないといったようなことでした。確かに、技術が進歩すると人間はそれだけ楽になるので、体力が落ちるのは勿論、頭も悪くなるという相関関係はあるのではないかと思います。江戸時代の人たちの話などを聞いていると、驚くほど頭が良いと感じさせられることが多い。


 とは言うものの、私も最近は何か調べ事をしたり、考える参考資料を探すときはすべて「ググる」わけで、若い頃のように書店や図書館で参考文献を探したり、辞典やはたまた六法全書をひっくり返したりはしません。それで記憶力が落ちたり、思考力が下がったりしたかといえば、そういう実感はありません。むしろ、多くの情報が非常に効率良く得られるので思考は深まるように感じます。
 もし、子供たちの学力がデジタル学習で下がっているというのが本当なのであれば、一つには、問題練習の質の低下にあるのではないかと思います。デジタル学習だと、どうしても回答がクリック中心になってしまい、書くという行為が欠如するのではないでしょうか。そりゃ、学力は書かないと身に付きません。それと、やはりデジタル学習が悪いというよりも世の中の進歩により人間の頭が悪くなるという一般法則が働いているに過ぎないのではないでしょうか。最近は子供の自治が失われ、なんでも大人が管理しているし、そもそも子供の社会というものが消失してきている。そうした中で、人間関係をベースとした柔軟な思考力は育ちにくいのではないかと思います。


 それでもまあ、子供の方は心配ないのではないでしょうか。昔のようにはいかないかもしれませんが、それでも年齢とともに知性は高まっていきます。問題は、むしろ大人の方でしょう。あくまでも一般論で、例外もあるのですが、昨今の業務能力の低下は洋の東西を問わず、目を覆いたくなるものがあります。まずは、何をやるにもとにかく遅い。昔なら、1~2日で回答が返ってきた見積り依頼なども、今では2カ月経っても音沙汰がないなどということも珍しくありません。問い合わせても返答がないなどということは普通です。相変わらず、稟議なるものがあるようですが、それには体感で昔の5倍はかかります。また、とにかく不真面目。何が正しいのかは一切考えない。とにかくマニュアルに近いことを適当にやって、仕事は終わったことにする。契約書のレビューなどもいい加減なことを思い付きで言っているものばかりで、まるでおとぎの国の謎かけゲームみたいです。

 この退化の原因は何なのでしょうか。やはりデジタル化でしょうか?思えば、職場のデジタル化が始まったのは、今から35年ほど前、各社員に一台パソコンが支給され、それを持ち歩きながら仕事をするようになった時からでしょう。これにより、2つ大きく変わったことがあります。それまで音声で行われていたコミュニケーションが、Eメールという形で文字で行われるようになりました。そしてもう一つ。お絵描きソフトの普及で、それまで言葉でしていた説明が、視覚化するとわかりやすいという名目で、絵でされるようになった。ただ、これにより人間の業務能力が落ちたのかといえば、多少は落ちたかもしれませんが、そこまでではなかったような気もします。業務効率という点では、むしろ決裁にしても業務上のコミュニケーションにしても大幅にスピードアップしたし、契約レビューの質も大きく上がったと思います。
 問題は、その次に来た導入の波ではないかと私は考えています。先ずその代表が、稟議の効率化の名目で導入された決裁業務システム。当社もこれを使う企業の決裁の遅さにほとほと困り果ててしまうことが日常茶飯事です。以前であれば柔軟な対応というものも可能だったのでしょうが、今はとにかくこの無能なシステム君が「稟議者全員のハンコが揃いました」と言ってくれない限り、何事も一歩も前に進みません。その昔は、今こそ自らの実力を示す時だと社内を奔走してハンコを集めてくれた「担当者」と呼ばれる方々も、今ではシステム君のせいにして、後は知らぬ存ぜぬです。

 そして次に、営業管理システムなどの業務管理システム。これは、業務プロセスの見える化というお題目のもとに職場にはびこってきたわけですが、なんでも、ここに適切にデータを投入すれば成果が必ず上がるということになっています。この適切なデータを「KPI」などとも言うわけですが、適切にそれを投入すれば成果が出るということですから、管理者はとにかく部下にKPIを達成して、ここに投入させることだけに注力します。確かに、それは以前の人間マネジメントより楽ではありますが、成果は出ません。当たり前です。無能なシステム君は、ただ計算をしているだけで何も考えていないのですから。

 そして現在、ついにAI君なるものが、「僕は考えてるよ」などと言って出しゃばってきていますが、実際に仕事をさせてみると契約書のレビューも議事録作成もひどいものです。やっぱり、なにも考えていない。しかし、果たしてAI君が今の人間に比べて仕事ができないのかといえば、一概にそうとも言えない気もします。それくらい、人間もヒドイ。これから始まる世の中が、人間とAIでどちらが馬鹿かを競い合うマイナス・ゲームなのであれば、あんまりエキサイティングではありませんね。


代表取締役 CEO 奥野 政樹

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