- CEOニュースレター
- CEO News Letter
- トップページ
- >
- CEOニュースレター
- >
- 軽くなる言葉
軽くなる言葉
2025年10月01日
まずは、以下のメールをご覧ください。
——————————————————————————————————–
突然のご連絡、失礼いたします。株式会社✕✕✕の〇〇と申します。
このたび、弊社未経験要員にて「CCNA・LPIC取得レベル」「英語対応が可能」 「夜勤含め柔軟な勤務対応」な
高い学習意欲を持つ要員が参画可能となりましため、ご連絡させていただきました。
対象エンジニアは以下の特徴を持っております
・IT業界未経験ながらも、日々の学習を継続中(スクール受講歴あり)
・英語対応可能(TOEIC800点レベル)で、海外対応や外資系クライアント との やり取りも可能
・夜勤/シフト勤務対応可能、特にインフラ運用監視、ヘルプデスク、テスト業務ももちろん可能
未経験枠の中でも、語学力と勤務対応力の点でご期待いただける人材かと存じます。
(もちろん経験者もプロパーには在籍しております)
ぜひ、今後のご案件にてご検討いただけましたら幸いです。
つきましては、一度Webにてお打ち合わせのお時間を頂戴できればと考えております。
——————————————————————————————————-
過日、受け取った営業のメールですが、どこかテイストが通常の者と違います。まず、当社のニーズに対してかなりカスタマイズされた訴求がはかられている。
「英語対応が可、 夜勤含め柔軟な勤務対応可能な、高い学習意欲を持つ要員」というのは、当社がバイリンガルNOCのメンバーとしてまさに求めるスペックです。そして、「未経験枠の中でも、語学力と勤務対応力の点でご期待いただける人材かと存じ ます。」の部分ですが、通常、この手のエンジニア系人材会社で未経験者がいるということを売りにしてくるところはありません。どこも即戦力の経験者がそろっていることを喧伝してくるものです。これも当社の、下手な経験者よりポテンシャルの高い未経験者を採用したいという特異な志向におおよそ合っています。
ただ、このメールの説得力があるかと言えば、実は全くありません。なぜかというと、まず方々に不自然な言葉遣いが散見されます。例えば「高い学習意欲を持つ要員が参画可能となりました」ですが、「参画可能となった」というのはどういうことなのか?派遣するために採用をしたのか、紹介する人材として登録を考えている人材が見つかったのか、はっきりしないのです。そもそも、「参画する」ということは、その会社のプロジェクトか何かに新たに加わる、ということでしょうから。それが、一体当社にどういうメリットがあるのかがよく見えてきません。
つまるところ、この会社が何をやっている会社なのか。人材紹介なのか、派遣なのか、はたまた請負なのかが見えてこないのです。そして、どうにも言葉遣いが明確さに欠けています。「CCNA・LPIC取得レベル」「TOEIC800点レベル」とは一体、どれくらいの「レベル」なのか分かったようで分かりません。究極は「勤務対応力の点でご期待いただける人材」とは一体どういう人材なのでしょうか?勤務対応力などという言葉は聞いたことがありません。さらに、同じ内容が重複して述べられており、文脈も稚拙です。
このメールから受ける第一印象は何でしょうか?それは「嘘だな」です。そしてこの嘘つきメールを書いたのは誰か?そう、もう、お判りでしょうが、ほぼ間違いなくAI君でしょう。当社のホームページの採用ページを見て、こざかしく、そこに書いてある当社の人材像に合わせて作文をしたつもりなのでしょうが、まったく心に響くものはありません。
それでも、どう対応するつもりなのか興味があったので、人事担当にこの会社に連絡させてみました。すると、出てきた担当者はこのメールの存在すら知らなかったようで「その、参画可能になった人材とは一体どういう人物なのか?」の質問の意味はまったく分からない。それでも、いつも通りの人材紹介会社の定番トークを繰り出したそうです。
この言葉の軽さは一体、何なのでしょうか?AIと人間がなんら連携することなく、各々が、ただ、でたらめな文句を並べ立てているだけです。それで通ると思っているのが私などは怒りがこみあげてくるのですが、どうも、最近ではそれであながち通らないというわけでもないようです。
当社人事担当は、「人材紹介と教育をやっている会社みたいですね。次の採用の時には声を掛けますよ」という結論になったというので、私は、「何を言っているの?出禁に決まってるでしょう、嘘つきなんだから!」と叫んでしまいました。
言葉がどんどん軽くなっていく時代。私のような古いタイプにはもはや居場所はないのでしょうか?
あー、嫌だ、嫌だ。
代表取締役 CEO 奥野 政樹
- 最近の記事