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-去年はオーストラリアのパースで、今年は山手線で遭難-
2026年09月01日

バスは新宿駅新南口10時5分発。レツ(麻雀用語でコンビ打ちのときの相棒の意。ここでは旅の「連れ」のこと)は、ちょっと時間ありすぎるけど駒込駅9時8分発の山手線で行くとのことで家を出た。我が家における旅行では、私には殆ど決裁権はない。すぐおかしな方向に行くということで前を歩くことも阻止される。でも、歩くんだけどね。遅いの嫌だから。結局9時8分の一本前の電車に乗った。新南口ならよく知ってるし時間を潰せるところも知ってるよと言っても、レツは一向に信用しようとしない。とにかく断りもなくどんどん先に行くなという。そうこうしているうちに、巣鴨と大塚の間で山手線急停止。
車内放送で池袋と大塚の間で線路に人が立ち入ったのが見えた、とかなんとか。レツに緊張が走る。しかし山手線歴数十年、山手マイスターの私は動じない。「よくあることさ。10分で動くよ。早めに出た作戦は成功だったな」と応対。ほどなく、大塚駅まで徐行で入るとのアナウンスがありその通りに駅に入線した。「ただいま、確認を行っており運転再開時刻は9時30分の見込みです。」との車内放送だった。レツはそこで都電、鬼子母神、都営で新宿3丁目の迂回をぼんやり主張したが、マイスターは「9時半でも楽勝で間に合うんだから。無意味に動かない方がよい」と主張。珍しく、なし崩し的にその提案が通った。
そして案の定、予定より早く電車は動き出した。ほらね、とマイスターは得意顔も束の間、大塚-池袋間で電車は再停止した。ちょっとこれまでに経験したことのない流れに、私の心に一抹の不安がよぎった。車内放送で運転士が確認のために車両を降りると言っている。乗客全体が緊張しているのが伝わってくる。心地の悪い静けさの後、絶望の車内放送が流れた。「只今、人身事故であることが判明しました。運転再開見込みは11時30分となります。」社内にどよめきがおこった。
駅と駅の間で2時間の幽閉である。先ず最初に気になったことはお互いトイレ大丈夫かということ。
まあ、そこはいけそうでちょっと安心したが、実は私はそこまで自信がなかった。
もともと閉所恐怖症で、狭い所に閉じ込められるのが嫌い。レツは冷静にJRバスの払い戻しポリシーをスマホで調べている。マイスターは「前例にこだわらず大塚駅に戻るべきではないか?」と評論したが、レツは全く聞いておらず、キャンセルポリシーの確認に集中している。と、そのとき、「この電車は大塚駅に戻ることになりましたが、準備にしばらくの時間を要します」との社内放送。マイスターの虚栄心は少し満足された。ほどなく運転手が線路を後部車両に走って行くのが見えた。車掌さんはどうするのかと見ていたが、出てこなかった。電車が大塚駅に戻るべく動き出すまでに20分くらいかかっただろうか。
その間、レツとどうやって新宿にたどりつくか緊急家族会議を行い、都電案、都営地下鉄案、タクシー案、池袋まで歩き埼京線案など様々な検討がなされたが、最終的に新大塚まで歩き、丸の内線でお茶の水、そこから中央線に乗ることに決まった。
ただ、その後に後楽園、水道橋説を私は唱えたが、レツの強い批判の前にその案は消え去った。
同時に少し心に余裕ができ、何が起きたのかの状況整理も行った。先ず最初に人影が見えたけど、それは消えたわけでしょう。そのとき電車に飛び込もうとしていた人がいたが、電車が急停止したため失敗し、急いで物陰に隠れた、というわけか?それで運転再開したのを見計らって再度飛び込んだわけ?その先は、考えるのをやめた。後で知ったことだが、事故は大塚-池袋間で起きたとのこと。
私たちは先頭車両に乗っていて、フロントガラスから運転士さんが確認に降りていくのを私は見ていた。
その直後、運転士さんは何を観たのか。とにかく「人身事故であることが判明した」のである。それでも彼は、その後大塚駅までバックするため、最後尾の車両にむけて走っていった。
彼もまたプロなのであろう。
さて、大塚駅から新大塚駅への移動開始。同じ作戦の人達はたくさんいるが、日本人というのはこういうときも動揺せず、ただ無言で目的地に向けて前進する。まるでゾンビのように。私はゾンビになりたくないので、まだ後楽園乗り換え案の有効性を主張していたが、レツが切れかけたので結局ゾンビになった。私はJRの定期を保持しているので振替輸送で無料だったが、レツはパスモなので課金された。でも、レツはそんなことはどうでもいいようだった。むしろムッとしたのは、新宿についた時バスの時間を変更するのに遅延証明を求められたことだった。たしかに先日当社内でも話題になったが、今時遅延証明などありえない。
また、ポリシーにはキャンセル料を払えば時間変更は自由と書いてあるのだそうだ。結局、2時間遅れのバスにキャンセル料をとられ、「次からはちゃんと遅延証明をもらってくださいね」となぜか上から目線で言われ、レツは納得がいかなかったようだが、私は「今の世の中、こんな奴らばかりだから、まあ、オイラのよく知ってる高級レストランで時間潰そうぜ」とその場を取り繕った。そしてその店の前に行くと長蛇の列ができていた。それでもレツは新宿のプロを自認する私に渋々ついてきて、とても高い店で、超ボリュームあるピザと、シーザーサラダと、ビールを頼むことになった。
しかしこれを食べるのは90%が私なので、私の日々のランニングの努力は無駄になった。さらに何とかたどり着いた先のホテルでは、目の見えない私は夕食のバイキングで「KIDSコーナー」の表示が見えず、先ずはこれだなと居並ぶ子供達を押しのけ、お子様用焼きそばだのハンバーグだのエビフライだのを大量に食した後でそれはお子様用だとレツに指摘され、せっかくなので大人向けのものも寿司12巻、そば一杯、トルティーヤ一つ、ステーキ一枚、そして最後に、探してもないないと思っていた定番のカレーライスがあったので、ドカ食いした。私は翌日にかけて胃腸に不調をきたした。それでもそのカロリーを消費すべく翌朝5時からとんでもないアップダウンをランすることになり、足腰はボロボロに。今週の社内行事の水曜日のランニングクラブは、難しいかも。夏休みの遭難はいつまで続くのだろうか。
代表取締役 CEO 奥野 政樹
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