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サッカーの組織論

2014年08月01日

ワールドカップ・サッカーが終わりました。私がワールドカップを見だしたのは36年前のアルゼンチン大会からですが、西ドイツというチームが、毎回ゲルマン魂なる神秘的な力をもって窮地を脱するのを見るにつけ、「この国には何かある!」とすっかり魅せられてしまいました。それが、歴史の流れで東ドイツと統合されてただのドイツになり、魂も2倍になるのかと思いきや、一度離れた価値観の融合には、どうも魂はあまり有効ではないようで、奇蹟を起こさない普通の強豪国になってしまいました。毎大会やや寂しい思いをさせられてきましたが、そのドイツが、今回優勝しました。しかしそのサッカーは、以前のように何度跳ね返されても武骨にサイド攻撃、ヘディング、こぼれ球に殺到を繰り返すという鬼気迫るものから、パスを繋ぎ、外から中へ、また外へ、相手のディフェンスを翻弄してゴールという、綺麗で淡々としたものに変わっていました。カルチャーは時間とともに変わるというのは、私にとってはちょっとした驚きでした。


今大会、解説でしきりに「ポゼション・サッカー」と「リアクション・サッカー」ということが取り沙汰されていました。ポゼション・サッカ-は、華麗かつ多彩なパスでボールを繋ぎ、ボールの支配率を高めながら、相手のディフェンスを創造性と意外性のある組立で切り崩す攻撃的スタイル。一方、リアクション・サッカーというのは、まず守備をがっちり固め、攻めてきた相手からボールを奪い、相手が前掛になっている裏をつくロングパス一発でカウンターをしかけるという、守備的なスタイルということのようです。


ポゼションサッカーの代表国は、まずスペイン、そして我らが日本、ブラジルも基本的にこちらです。ポゼション・サッカーはうまく決まればとてつもない破壊力を発揮しますが、各選手の動きが複雑に連動する必要があるため、少し歯車が狂うと、とたんにシステム全体が崩壊するという大きなリスクが伴います。今回これらの国々は、前回優勝国や開催国、前回うまくいったからそれよりもっとという期待、更にはエースとキャプテンの突然の離脱といった精神的な重圧からなのか、みんな、一言で言えば崩壊してしまったのです。

 その点、リアクションサッカーはシステムが単純ですから、個々人のパフォーマンスが多少ぶれてもシステム全体に大きな綻びは起きにくい仕組みです。今大会では、安定的な強さを発揮したオランダがこの典型ということになります。今回、バックを5人置き、相手が自陣に入ってくるスペースを極端に狭め、更に一人が相手のエースにずっとつきまとって嫌がらせをする(笑)ことを専担とする選手を置いていました。11人中8人が守備中心です。それで、ボールを取るや前線にロングパス、すると、出る大会を間違えているのではないかと思われるほど足の速い選手が、一気にボールを相手ゴール前に運んでしまい、もう一人のデカイ選手と2人であっという間に得点してしまいます。その繰り返しで、素人目にも単純ですが、これが実によく機能しており、相手はわかっていてもどうにもならないようです。リアクション・サッカーの安定性というのは、難しい状況下では非常に魅力的であり、実は前回大会で、日本は本番で突然、ポゼション・サッカーからリアクション・サッカーにシステムを変更して成功しているのです。


ところで、あまり意味はないとわかっていながらも、アナロジーというのはどうしてもやってみたくなるもので、これを会社経営に置き換えるとどういうことなのかを考えてみました。まずポゼション・マネイジメントというのは、社員個々人に、プロフェッショナルとして完成し、各自の判断で動ける人材を揃え、それらの社員たちが、ルールや役割分担をあまり意識せずに自由に動きながら有機的に相互連携をはかり、新しい付加価値を生み出していくスタイルということになるでしょうか。一方で、リアクション・マネイジメントは、各社員の役割を明確に規定し、まずは各人がそれをソツなくこなすこと(守備)を重視、各人の連携は定例会議や報告フォーマットなどで定型化し、その実施についてマネージャーが管理しながら、眼前の課題を解決していくというスタイルになるのではないかと思います。

 こう書くと、一見ポゼション・マネイジメントが進んだ経営で、リアクション・マネイジメントは古い経営手法にも聞こえるかも知れませんが、そうでもありません。実際、当社も創業当時、安定を特徴とするリアクション型を目指しましたができなくて、やむなくポゼション型に変えたのです。理由は簡単で、守備のできる人が採用できなかったからです。守備ができないのですから、もう攻撃するしかありません。守備というのは総合力がないとできませんが、攻撃というのは、何か一つでも武器があればなんとか成り立ちますから、それを無理矢理にでも繋ぎに繋いで攻撃をする。チームワークが悪く、個々人が別に完成したプロでもないのにこれをやるのですから、これはもう、いつ崩壊してもおかしくない、極めて危ない状態です。
 それでも、ある一定の時期を乗り切ると会社も世の中に認められて、だんだんと守備のできる人が採用できるようになってきます。そうすると、今度はリアクション型も機能するようになり、会社は不測の事態にも組織で対応できる安定性が生まれてきます。

 こう書いてくると、やはり結局リアクション型の方がいいじゃないかという結論になってしまいそうですが、リアクションによる安定ばかりを追求していては、今度は目の前の課題は解決できても、新しい付加価値は生み出せない組織になってしまいます。


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今回決勝を闘ったドイツとアルゼンチンですが、両チームとも、ベースは守備重視のリアクション・サッカーです。しかし、優勝したドイツは決して華麗で多彩とは言えませんが、パスワークというものを取り入れており、ポゼション的な要素が程よくブレンドされていました。また、アルゼンチンの守備重視というのは、カウンター攻撃の効率に注目しているというよりは、メッシというスーパースターを守備の負担から解放し、点を取らせるために残りの10人が裏方に徹するというコンセプトで、会社経営に例えれば、優秀な社員に対するエコ贔屓システムです。

 この2チームが決勝まできました。そして、どちらが優勝してもおかしくない熱戦を演じてくれました。結局のところ、経営へのアナロジーとしては、ポゼション型もリアクション型も原理主義的に追及するのは間違いであり、状況に応じて適切にブレンドする必要がある。また、時にはアルゼンチンのシステムのように特殊なやり方にもチャレンジする必要があるということになるでしょうか。やはり、アナロジーからは大したことはわかりませんでした。


代表執行役CEO  奥野 政樹

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