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ピアリング・IX・IPトランジット接続の違いと相互接続の課題
Tier2 ASを保有する事業者を悩ませる、相互接続の管理・運用。
最適な構成を模索したくても、とても手が回らない…
インターネットは、世界中のネットワーク事業者が保有するASを相互接続し、トラフィック交換することで成り立っています。
相互接続の根幹とも言えるピアリング、インターネットエクスチェンジ(IX)、IPトランジット接続とは何か?それぞれの違いや特徴、そして相互接続における課題と解決策を解説します。
そもそもAS(自律システム)とは?
本題であるピアリングやIPトランジットについてご案内するためには、まずASについて触れておかなければなりません。
ASとは「Autonomous System」の略で、「自律システム」とも呼ばれます。(便宜上、ここでは各ネットワーク事業者が自社の管理下にあるネットワークのこととお伝えしておきます)ASは大きく分けるとTier1 ASとTier2 AS(もしくはTier2 AS以下)に分かれます。その違いについては後に説明します。
各ASにはAS番号が割り当てられています。例えば、PacketFabricが管理するASはAS1828です。
インターネットはASの集合体
インターネットは、世界中のネットワーク事業者が保有するASを相互接続し、トラフィック交換することで成り立っています。
そして今日のインターネットにおいてトラフィックの大部分(60%~80%)はTier2ASから別のTier2ASに向けたものだと言われています。例えば、個人が自宅や外出先でパソコンやスマートフォンを使って動画を見たりゲームで遊んだりする場合、契約しているISPやモバイルキャリアを介してコンテンツプロバイダと通信することになります。
これらISP・モバイルキャリア・コンテンツプロバイダはいずれもインターネットの世界ではTier2と呼ばれるASネットワークとなります。
個人だけではありません。企業もオフィスで契約しているインターネットプロバイダを介してMicrosoft 365やZoomミーティングといった様々なクラウドサービス(SaaS、PaaS)を日々利用します。これらクラウドサービス事業者もまたTier2 ASに当たります。
ピアリング、IPトランジット、インターネットエクスチェンジ(IX)の違い
AS間の接続には、大きく分けてピアリングとIPトランジットの二種類があります。
ピアリングとIPトランジットの違いは接続方式です。異なるASを相互接続しているという意味で両者は共通しています。
インターネットエクスチェンジ(IX)とは、ピアリング方式の一部であるパブリックピアリングにおいて用いられるハブ拠点で、複数のAS同士の接続を実現します。
ピアリングとは?
ピアリングとは、AS同士が専用線や同データセンタ内の構内配線を用いて相互に接続し、お互いのトラフィックを直接交換する方法です。
ピアリングすることでTier1 ASを経由することなくAS同士が直接通信することができます。フリーピアリングとも呼ばれるように、ピアリング間では通信費用が発生しない点も大きな利点です。
ピアリングには、2つのASを直接接続する「プライベートピアリング」とまとめて複数のASを相互接続する「パブリックピアリング」があります。
前者のプライベートピアリングは接続するAS双方にメリットがあると合意された場合にのみ成立するため、同規模程度のAS間で成立します。
IX(インターネットエクスチェンジ)とは?
一方でパブリックピアリングはまとめて複数のASが相互接続を行う方式で、小規模なネットワークでも実施可能です。この時、複数のAS同士のハブの役割を果たすのがインターネットエクスチェンジ(IX)です。IXへの接続サービスを提供する事業者はIX事業者と呼ばれます。パブリックピアリングは小規模ネットワークでも接続できる反面、IXへの接続にはIX接続料に加えてIX拠点までの回線手配が必要となります。
IPトランジット接続とは?
IPトランジット接続は、ASが別のASに対して提供する接続サービスです。英語のTransit(通過、通行)からイメージしやすいかもしれませんが、トランジット接続の提供元が提供先に対して、自社のASを通過させることでさらに別のASまでトラフィックを届ける接続方式です。
多くの場合、IPトランジット接続サービスはTier1 ASをはじめ、大規模な通信事業者によって有償で提供され、高コストとなります。
AS保有事業者を悩ませる、相互接続の課題
さて、ここで課題となるのが、インターネットにおいてトラフィックの大部分がTier2 ASからTier2 ASに向けたものにも関わらず、その多くはTier1 ASを経由しなければ到達できないという点です。
Tier1 ASとは、そのネットワークの規模により決まるものと考えられがちで、確かにごく一部の巨大な通信事業者がTier1 ASの座に君臨しています。しかし、それより重要な特徴は、Tier1 AS同士は相互接続している上、お互いを行き来する通信に関しては料金が発生しない点にあります。つまり、Tier1 AS(A)とTier1 AS(B)はお互いにどれだけ通信を流しても通信料は発生しません。
それではTier1 ASはその巨大なネットワークを維持し続けるための費用をどこから得ているかと言うと、Tier1 ASと通信するためにTier2 ASが支払っている高額なトランジット接続料です。これがTier1 ASとTier2 AS(もしくはTier2 AS以下)の決定的な違いとなります。
また、Tier1 ASを経由することが通信品質の面で課題になることもあります。Tier1 AS群の大規模ネットワークを経由するトラフィックは、たとえ遅延や障害が発生している経路を通っていたとしても送信者側で解決するのは非常に困難です。国内の通信なのに、一旦海を渡って戻って来るということすらあり、通信品質の低下につながる恐れがあります。
一般的にTier1ASのトランジット接続料は高額であるため、「これではコストパフォーマンスが悪い」とお感じになりながらも他に代替先も無く、やむなく契約を継続しているTier2 ASの保有事業者も多いのではないでしょうか。
大切なのはピアリングとIPトランジットの組み合わせ
ピアリングやインターネットエクスチェンジ(IX)によってTier2 AS同士も効率的にトラフィック交換することが可能となるとはいえ、世界中には74,000以上(2023年3月現在)ものASが存在しているため、すべてのASとピアリング接続するのは現実的ではありません。あらゆるASとの通信経路を確保し、インターネット通信における到達性を確保するためにはトランジット接続も併用する必要があります。
つまり、IX接続を含むピアリングとトランジット接続を最適な組み合わせで利用することが重要なのです。
しかし、トランジット接続と一言で言っても、国内外のトランジットプロバイダが提供するサービスは多種多様です。
トランジットプロバイダによって接続メニュー、料金体系、サポート体制等はそれぞれ異なるため、自社ASの規模やトラフィック傾向、リスク許容度等を鑑みて最適なサービスを検討する必要があります。
DDoS攻撃への対策や障害発生時の復旧手段も重要な観点となります。
また、トランジット接続においても冗長化構成を確保するなど、バックボーンのどこかで障害が発生しても「落ちないAS」を設計しなければなりません。
これらすべてを管理して最適な組み合わせを模索するのは容易なことではありません。インターネットの世界では常に新たなサービスやASが出現する一方、障害やサイバー攻撃などにより通信遅延や通信断が発生します。トラフィックは大変流動的であり、それに合わせた調整が必要となります。また、ピアリング相手との交渉やトランジット接続のコスト管理も煩雑です。
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